ある日、私は自分の子供達に自転車の乗り方を教えていなかったことに気付きました。もちろん、乗る手伝いはしていました。子供たちが自転車の上でバランスを取って、ペダルを踏む間、ずっと自転車を支えていました。でも、夫はいつも自転車を支える手を放して、子供たちが勝手に漕ぎ出すようにさせていました。そうやって、自立心を育てていたんです。
それに気付かされたのは、一番下の子が補助輪なしで乗る練習を始めた先月の事でした。夫が不在の週末でしたが、下の子はそろそろ補助輪を外す頃だと思い、補助輪なしで乗る練習を始めたのです。週明けに夫が帰って来ると、手でサドルの後ろをしっかり掴んで息子を自転車にまたがらせた直後、その手を放しました。ただそれだけです。息子はもう自転車に乗れるようになっていました。その時、息子を保護する手を放すことがどれだけ難しいことなのか、やっと気付いたのです。
夫がいなければ、私は今でもこの子の自転車の後ろでオロオロと走り回っていたに違いありません。私は息子を自転車で走り回らせるのではなく、引き留めていたのです。
どうやって子供を試練に取り組ませるか、悩んだことはありませんか?この記事では、子供たちに恐怖とどう戦い、勇気を持って困難を乗り越えるのか教えるためのアイデアをご紹介します。
人生に困難は付き物です。歩くことを覚えるのは難しいし、成長する過程で幾多のチャレンジが必要です。良き配偶者になることも簡単ではありません。母親の役割だって大変です。本当に人生は大変な事ばかり。なのに何故私たちは、子供たちが困難に遭った時に上手に切り抜けられるように、プレッシャーで挫折しない心構えを教えようとしないのでしょうか?子供たちに物事を短絡的に捉えない広い視野を与え、困難と向かい合っても対処できるトレーニングが必要だとは思いませんか?
困難に立ち向かえる子供を育てるために目的意識を持って行うべき5つのこと。
1.失敗を経験させる
家庭は人生の練習場です。何があっても子供たちが愛される場所、「何ができるか」で子供たちが評価されない場所、そして、子供たちが転んでも落っこちても安全で、また立ち上がるのにはどうすれば良いのかを学ぶ場所なのです。
ケガの手当をしなければならない母親にとっては難しいことなのはよく分かります。私自身、でこぼこのない平らな場所で、我が子が上手く自転車に乗れるようになるまでずっと後ろで支えてあげたいと思います。でも、長期的に見ると、それでは子供の助けにはならないのです。
手厳しい職場や学校の授業中は、子供たちが初めての失敗をするのに相応しくありません。子供たちがへまをしても、盛大に失敗しても安全な場所で、失敗したらどうなるのかを知り、失敗しても大丈夫な事を覚え、そして再び立ち上がって再挑戦するには何が必要なのかを学ぶ場所と機会を、家庭で積極的に準備してあげましょう。
2.困難に立ち向かう術を身に付けさせる
子供たちが困難と向き合った時にどう反応するかよく見て、どうすれば上手く対応できるのかを教えてあげましょう。最近、私の娘は二週間の水泳教室に参加しました。この子は今まで泳いだことがなく、最初は怖がっていましたが、一週目が終わる頃には水への恐怖も薄らいで、楽しんでいる様子でした。
しかし、週末に水泳から遠ざかっていた後、二週目のレッスンに戻りたがりませんでした。泣きながら、自分はどれだけ水泳が嫌いかを私に訴えるのです。私はすぐに、これは水泳が好きか嫌いかの問題ではないと思いました。娘は水入るのが怖いのです。数日前まで楽しそうに泳いでいたのに、今は、自分は水泳が嫌いだと自分自身に嘘をついて、その嘘を信じ込んでいるのです。水に対する恐怖心に支配されているのです。
この一件で私が学んだことは、はた目にはどんなに不合理で、あり得ない事で、バカバカしく見えても、恐怖心は本物だということです。人は皆、それぞれ違う恐怖の対象があります。その渦中にあるとき、恐怖感は現実に存在します。他者の恐怖感を軽視してはその人を助ける事はできません。
この時、自分の数学の先生の事を思い出しました。その先生は数学なんて全部簡単だと思っているような人でした。でも、だからと言って、私が数学が苦手だという事実は何ら変わる事はありません。良い成績を取るには、相当の努力が必要でした。私にとって、数学は簡単じゃありませんでしたが、努力して困難を乗り切る事、そして大人になってからはできるだけ数字を避ける事を学びました。(最後の部分は冗談です・笑)
同じ戦略が水を怖がる私の娘にも当てはまります。どれだけ水泳は怖くなく、楽しいのだと説得しても助けにはなりません。怖くなった時はどうすれば良いのか、自分の心を蝕んでしまうような嘘にどう立ち向かえば良いのかを教えるほうがずっと有効なのです。
3.事実を話す
子供を心変わりさせようとしたり、不満ばかり言う態度を改めさせようとする一方で、我が家では大変なことは大変だと正直に言えるようにしています。水泳を習うのは難しいし、草むしりだって難儀です。整頓されたきれいな家を保つには相当の努力が要ります。でも、大変だからと言って、やらない訳じゃありませんよね。
子供たちが成長するにつれ、私たち家族はもっと人生の困難について話し合うようになりました。何故なら、現実の困難はおとぎ話の魔法の杖の一振りで消えてはくれないからです。父親の仕事がどれだけ大変か、毎月の請求書や税金の支払いのこと、不公平に又は不親切に扱われた体験などを率直に話し合います。
こういった話題に事欠くことはありません。食品店のレジ係は忙しい日だったらしく不愛想だったとか、工事現場の労働者がヘルメットの中から滝のような汗を流しながら働いていたとか、何でも子供たちと話し合います。耳障りの良い教訓ではなく、事実を話し合うことで、試練は人生の一部であり、避けては通れないことを理解できる素地を整えるのです。
4.困難を乗り越えるトレーニング
子供たちに敢えて困難な事をさせようと考えたことはありますか?我慢することの価値を学ばせるために、たとえ子供たちの意思に反しても、現実がどういったものなのかを理解させる。そうする事によって、子供たちの中に実直さと不屈の精神が育つのです。
家族ぐるみで何か大きなチャレンジをしてみましょう。子供が話したがらないことがあれば、じっくりと聞き出してあげましょう。子供が嫌がっても謝るべき場合は謝らせましょう。他の人の為に自分を犠牲してまで何かをしてあげるのを見せましょう。そのような行為は大人でも難しいくらいですから、殆どの子供たちにとって自然と身に付くものではありません。目的意識を持って子供たちにやり遂げさせたら、新しい環境で更に練習する機会を与えましょう。もちろん、あなたも同じように頑張る姿を見せる事を忘れずに。
家庭でも、困難な事をやり遂げる練習をさせましょう。あなたの家では、やらなくてはいけない家事が山ほどあるのに、大人が片付けてしまう方が早くて後始末も要らないからと、つい自分達でやってしまうのが習慣になっていませんか?子供たちに家事をさせるのは、彼らを成長させる事でもあるのです。
洋服を畳んだり、花壇の草むしりをさせましょう。台所の片付け方、階段の掃き方、窓拭きの仕方を教えましょう。成長するにつれ、どんどん家事をさせるようにしましょう。大掛かりな仕事をさせる場合は、それに見合った賃金を払ってあげます。但し、ちゃんと仕事ができた時だけ払うようにしてください。始めは仕事を監督するあなたの方が大変かもしれません。でも、子供たちは徐々に、一生懸命働く事、大変なことをやり遂げる価値を学ぶようになるでしょう。そして願わくば、あなたの家もきれいになっていくはずです。
5.やり遂げること
困難に立ち向かう訓練は躾けと同じで、例外を作らずやり遂げさせる事がポイントですが、実は親にとってはこれが一番難しくもあります。最近のことですが、私たちは息子に責任について教えていました。ある朝、夫は仕事に出掛ける前に私にこう言いました。「昨夜、責任について話し合ったよね。僕はタイラー(息子)に、今日僕が帰宅するまでにタイラーの仕事を責任もって完了させるようにって言ったけど、君からはタイラーに催促しないでくれるかな。」催促しない、それが母親をどんなに苦しめたかわかりますか?
午前9時:タイラーはまだ仕事に手を付けていません。
午前11時:仕事はまだしていません。私はタイラーに注意したいのに何も言えないので、唇がピクピクしてました。幸い、私が催促しなくても、タイラーは夫が帰宅するまでには何とか仕事を終えていていました。でも、いつもそう上手くは行かないですよね。
育児も子供をトレーニングするのも大仕事
子供を可愛いと思うからこそ、すぐに責任や困難から解放してあげたいと思ってしまうものです。でも、それは子育てする親の勇気ではありません。子育てする親にとっての勇気は、子供に教えた「困難を克服する時の勇気」と同じです。ただ目の前の現実だけではなく、将来を見据えて決断するのです。私は、責任感があってちゃんと仕事ができる大人になった息子を思い描いて、催促したい自分の口を噤みました。
<参考>Raising overcomers: How to teach your kids to do hard things
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