プロジェクト形式の学習は科学教育のギャップを埋めることができるか?

プロジェクト形式の学習は科学教育のギャップを埋めることができるか?

子供たちを意義のあるプロジェクトに取り組ませると、教室は俄然、子供たちの質問する声と何かを発見して興奮した声でわいわいと騒がしくなります。このプロジェクト形式の教え方については、比較的少数ではありますが厳密に調査した研究(SRI Internationalにによる研究報告)によると、実際に有効であるという結果が出ています。この心強い報告によると、中学生3000人に対してプロジェクト形式の授業を1年間行った結果、良く計画されたプロジェクト形式の教育課程を導入したクラスでは、科学についてより深く学ぶことができたとされています。

研究者がクラスのテストの成績を、生徒の性別や民族別に分析したところ、学習成績に差異は認められませんでした。つまり、質の良いプロジェクト形式の教育課程は、低所得層の子供たちやその他のSTEM分野(科学、技術、工学、数学)で低水準であると思われていたグループの子供たちと一般グループの子供達との科学の成績の差を狭める可能性があるもの思われます。この研究報告の共同著者で、カリフォルニアのメンロパークにあるSRIインターナショナルの専任研究員であるクリストファー・ハリスは「プロジェクト形式の科学の授業はどのタイプの子供にも効果があるようです。男子も女子も同じような結果が出ています。」と言います。教師がプロジェクト形式の教材を通して、生徒たちを意義のある教室活動に集中させることで、これまでとは違う効果が得られると信じているのです。

質の良い科学教育課程の教材を探すのは、非常に難しいです。都市部の公立校では、10年前と同じ科学の教科書が使われており、教育要領は生徒に科学に興味を持たせる機会を与えるような内容ではなく、大昔に発見された科学の公式や知識に重きを置きすぎると言います。生徒が実際に体験しながら科学に親しむようなアプローチがされていないのです。

従来の指導法が重要視していた、個々の科学法則をただ暗記する学習法から飛躍するために、新しい取り組みが必要です。子供たちに、いかに考えを処理し論理を進めていくのか、そして科学者やエンジニアが用いる自然現象の調査と問題解決の方法を学習させることが重要です。プロジェクト形式の研究学習プログラムは、その解決策として期待されています。生徒は科学者のようにプロジェクトに参加し、科学的であると同時に子供たちにとって意味のある「興味を駆り立てる質問」により構成された活動を行うからです。

プロジェクト形式の科学の授業を検証する

アメリカでは、プロジェクト形式の科学研究(PBIS)という機関があります。1990年代にアメリカ国立科学財団(NSF)に資金供給を受けたいくつかの大学によって開発されたこの手法は、学生がどのように学び、教師は学生に教えるために何が最良なのか、最新の研究結果を取り入れています。教材出版会社「It’s About Time」(その時は来た)は、その教育課程に基づいた教材を出版しています。

現在、PBISの教育活動は、調査を実行する、科学的な説明を構築する、模型を製作して活用するといった科学実習の中核となる活動に重点を置いています。例えば、ある物理のプロジェクトでは「何故、自転車に乗る時にヘルメットを被らなければならないのか?」と子供たちの日常に直接関連する質問をして興味を抱かせます。生徒たちはこの質問に答えるために、力、運動、加速、引力といった法則についての物理学的知識を積み重ねねるための教室活動を行い、ヘルメットがどのように衝突の衝撃から頭を守ってくれるのか、自転車のギヤを変えると、何故、漕ぐ力や進む距離が変わるのかを理解するように計画されています。

教師の指導の下、生徒たちが主体となって実験を行いますが、グループごとのデータ収集とそのための実験の準備、データ分析の方法、クラス全体でデータを共有し、議論し、論争するという、実際に科学者たちが行っている研究方法と同じプロセスが踏めるよう、教師がサポートします。

プロジェクト形式の物理科学の授業を受けた生徒は、従来通りの授業を受けた生徒に比べると、単元終了後のテストで平均しておよそ8%良い成績を得ている調査結果(SRIインターナショナル)があります。つまり、100人中50番目であった生徒が42番目に上昇するという調査結果となります。

私は、日本でも、学習研究の基礎となるプロジェクト形式の科学学習指導要領が更に広まることを望んでいます。そして、そのような教材は、特に小学校で必要とされていると強調します。何故なら、多くの小学生は中学校に入るまで、一貫した質の高い科学指導を受ける機会がないからです。早くから、子供たちに科学とはどんなものであるかという全体像を見せることで、子供たちに科学は面白いと気付かせ、更には将来的に様々な民族の科学者を育成することにつながる、それがSTEM(科学、技術、工学、数学)分野が望んでいることだからです。

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